魂の所在、ヤングライオンという序章
こんばんは、
筆者のザ・クスノキです。
今回は前記事からのつづきとなります。
前編をお読みでない方はお目を通して頂ければ、なぜベストオブスーパーJr26においてYOH選手を私が熱く取り上げるのかがお解り頂け、そして更に今回の記事の面白さが倍増するのではないでしょうか。
前記事↓↓
前記事ではYOH選手の意気込み公式動画をご紹介、コメントの引用において「生え抜き」というワードに焦点を当てました。
YOH選手がこの言葉を持ち出すのは今回を初めてではありませんが、生え抜きという意地を言い続けているその想いにスポットライトしようというのが前記事からの起点です。
そして、YOH選手が未だに捨てない魂、それはヤングライオン魂という物語。
テーマは“生え抜きとは何者か”
彼が未だに大事にしている「生え抜き」であるからこその物語をここで綴っていきます。
まずは小松洋平(現YOH)時代を簡単にですが見直していきましょう。
宮城出身で幼少期から両親の影響でプロレスをTV観戦し、中学一年の頃には既にプロレスラーへの大志を宿していました。中学2年には野球部から柔道部へ転向、高校・大学ではレスリング部に所属しすべてはプロレスラーになる為の下準備を重ねていました。
在学中に一度新日本の入門テストを受け合格を得ますが卒業を優先し辞退、卒業後に再度入門テストを受けますがこの時期は身長重視の方針により受からず(小松洋平の身長は171㎝)。
大学卒業後はフリーターをしながらもプロレス学校(新日本の三澤トレーナーらが2011年に立ち上げたプロレスラー養成所)に通いつつ2012年2月遂に新日本入門テスト合格。
その年の11月にはデビュー戦を経験、この時の小松は24歳でした。相手は先輩の渡辺高章選手。
もちろん先輩選手を相手にできた事といえば気迫を見せる、それだけ。
パワーも技術も何一つ差を埋められぬデビュー時であろうと、ヤングライオンに求められるのは気持ちです。ハートですよ。
ちなみに、この時の試合前インタビューで先輩・渡辺の事を聞かれ、
「道場生活では凄く優しい方で、よく相談したりとてもお世話になっています」との小松の弁。
そしてまた先輩には高橋広夢(現ヒロム)の存在も。
先輩二人との関係、後の相棒田中翔(現SHO)との仲の良さは当時からわりと話題になっていたと思います。良い環境、良い先輩、そして良きライバル。
物語の舞台はきっちりと用意され、あとは厳しい鍛錬とヤングライオンとしての勤めをこなしていく。ストーリーの地固めは万全ですね。
ちなみにこの時には既に小松の中にはビジョンが明確だったようです、続けてインタビュー時のコメントを記します。
「自分はJrでやっていきたいんで、将来的にはマスクマンになりたいと思っています。」
本人が何を目指すかは自己プロデュース力、そして会社の方針との兼ね合いがどう転ぶかといった所で非常にあやふやな時は多いですが、小松洋平に中には一本芯がある事はここでも見て取れるのですね。
しかし本人の心意が明確であろうと無かろうとそれは別として簡単な道のりではありません、そもそも序章を掴む為の新日入門テストは業界屈しの狭き門です。
身体力、体格、雰囲気、その時の面接官の趣向、更には会社側の方針。それらが運良く合致し潜り抜け、そしてそこから始まる下積み生活。
ヤングライオンである為にはハードな練習に加えその合間を縫っての雑用を強いられる寮生活でもあります。もちろん巡業中はリング設営も手伝ったり先輩達の試合のセコンド業務、デビュー戦を終えれば自分の試合もそこに組まれながら全てそれらをこなすわけです。
小松(YOH)が当時ヤングライオンとしての試合経験は非常に濃く厳しいものでしたね。
現在は選手としては長期欠場中ですが、あの柴田勝頼ともヤングライオン時に。
ストロングスタイルの最も固い部分を体現する柴田の洗礼を小松も体感したわけです、もちろん柴田相手に対して何もできず、何もさせてもえらえず一瞬で終わった試合内容ですが、ヤングライオンの時にストロングスタイル真っ最中の柴田勝頼を体感した、これだけでも充分価値があります。
これは生え抜きの者しか表現できない価値の一つです。
技も制限され、黒パンツ一枚と黒のリングシューズだけでプロレスの表現力を問われるヤングライオン。
柴田勝頼はヤングライオンを終え団体の枠を飛び出し紆余曲折した後も黒パン黒シューズのまま、そのシンプルな制約条件の中で個性を貫こうとしたお手本みたいなものですから、この柴田との初めての遭遇がいつどういうシチェーションにおいて経験できたかは価値があると言えるのです。
レスラーとして未熟であれば未熟なほどいい、その未熟な時期にどんな相手を経験したかは重要でしょうね。
しかしそんな劇的な渦中に身を投じていてもヤングライオンには雑用が待っています。
ヤングライオンの戦いの日々は歴史の重みを背負う覚悟を試される地味な修行道でもあるわけですね。
第三世代の厚みも体感、新日暗黒期に矢面に立たされながらも一心にその肩に背負った永田裕志の重い攻撃にもうこれ以上立てないって程に潰されだってしました。
それでもヤングライオンとしての努めは免除されません。
ジュニアの象徴にだってボロボロにされました。
小松洋平がジュニアでマスクマンを目指すといった言葉からはこの獣神サンダーライガーも彷彿とさせます。しかしその憧れの象徴であってもヤングライオンへの責めに手を抜いてくれはしない・・・、体の線が歪む程に絞られる責苦。。。
それでも、それでも、若獅子は命を削られながらであっても雑用というミッションをスキップできないのです
まだです。
とどめにトレーニングの日々。
これはむしろこっちがヤングライオンの最重要の任務であり本懐ですから、この血反吐の出るような過酷なトレーニング漬けを基本において上記の雑用と巡業が乗っかる形です。
精神的にも逃げ場無く詰められる様な息苦しさはゴール設定もその選手それぞれ異なります。ここが特にしんどいんでしょうね、全員が一律に期間を決められてヤングライオン生活を行うわけではありませんから。
会社からの期待、本人のアピール力、先輩レスラーからの評価、ファンの間での話題性、そして運とタイミング。その中で自身の個性もいつか花咲かせる為の構想を練っていかなければならない。
この過酷なロードにおいて危険因子も忘れてはなりません、それがケガです。
このケガへの恐れも常にはらみ、戦う。
練習中の事故、試合中のアクシデント、それらは偶発のみならず日頃の疲労が蓄積を進行させ耐え切れず必然のケガを招く事もあり、完全な防ぎは不可能。ケガはつきもの、言葉にすれば簡単ですがこんなにも恐ろしい言葉はないのではないでしょうか。
昨今でもヤングライオンの退団はありましたね。怪我の具合によってはヤングライオンのうちに退団を余儀なくされる事はよくある事ですから。
会社からの評価はケガへの耐性も含まれ、ヤングライオン時期においては契約するレスラーへのリスク管理として当然慎重に行われる、ですからヤングライオン時にケガに見舞われるレスラーは将来の大成へ危機を招く事この上無い。
物語で言えば濃密な章ですよ、このヤングライオンという序章は。
ここまでいかがでしょうか?
これだけの濃厚な序章で耐え抜いた者であればどんなに年月が経とうと生え抜きという言葉を口にし続けたい想いは当然だとは思いませんか?
プロレスラーにとってキーポイントになる個性をあえて埋没させる寮生活という下積経験。これでもかという位にこのヤングライオン魂を叩き込まれた者であれば、この生え抜きという自身で掴み取ったステータスに誇りを持ち続ける事はなんら不思議ではありません。
一体何者であるのか?
そうです、生え抜きとは誇りの者。 誇りを持つ者です。
改めて書く必要は無いと仰る方も居るでしょう。ファンならそんなこと周知の事実だと思う方も多いでしょう。でもどうでしょうか、それでも私はYOHの生え抜きを大事にする姿勢が響くのです。
誇りとは何か?それは過去に縛られているわけでもなく、辿った道のりが違う他者を縛るものでもありません。
2017年の発言ですが、これもまたYOH(小松)選手の発言です。
「古い考え方かもしれないけれど、新日本プロレスは生え抜きが引っ張らないといけないと思っている」
この時のYOHの気持ちとしては、自身の誇りを鼓舞する思いでの発言であり、フリーや海外の魅力的な選手達へのある種のジェラシーに近かった気配も伺えます。
そしてこの生え抜きというワードへ噛みついた選手もいます。
以前、他団体からの移籍を経たBUSHI選手からYOH選手の発言にこんな批判がありました、
「何だよ、そのこだわりは。そんなにヤングライオン?ライオンの血?って言うんなら1人だけでヤングライオン杯でもやってろ。1人で盛り上げてろよ。」
この噛みつき方はBUSHI選手の気持ちの表れでもあります。
生え抜きでない選手にだって新日本プロレスを盛り上げる事はできているんだという自負でもあります。これもまた、BUSHI選手は自身の道のりで得た誇りなわけですね。
そう、誇りはそれぞれに形は違えどある。
しかしYOHこと小松洋平にとっての誇りは自身の序章を絶対に無駄にはしたくはないという覚悟の証でもあります。生え抜きというワードを持ち出せば本人にはリスクがある、それは他者からの批判であったり、観る側からの期待のハードルが上がってしまうというやりづらさ。
YOHが生え抜きに誇りを持つという事、これは自分の物語における価値の問題でありますからYOH本人が自分で物語を紡いでいく上では絶対に欠かせないモノだということです。
YOHの昨日仙台大会でのバックステージコメントで使った言葉はとても納得のいくものでした。
「このシチェーションをモノにしたいじゃん、自分のモノにしたいじゃん。」
自分のモノにする、響きます。彼が誇りを持つ者だから。
自分の物語を紡ぎたい、だから彼は自分の序章を大切に繋げているのかもしれません。彼がこだわるのは物語の軸がブレないこと、そして新日本プロレスという物語を盛り上げる為に自分が最も大事にしているその誇りを使いたいという気概なのでしょう。
今回の記事はここで一旦休憩です。なんと、次回でもまたYOHです。
YOHの魅力をまだ書きます。
まさかの前編中編後編の三本立て、小松洋平という物語はまだ止まりません。
続きの後編はまたすぐです。
次回もお楽しみに!(楽しみにしてくれてる人は居るのでしょうか…)。
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